どうも、長尾です。今回も昔に書いた記事を掘り起こして掲載します。今から4年程前の記事になりますがご参考までに。
サイトを設計する手法として「ペルソナ定義」というものがあります。
ペルソナ定義の基となる概念は、マイクロソフトでVisual BASICを開発したアラン・クーパー(Alan Cooper)によって定義され、著書『The Inmates are Running the Asylum』で広く知られるようになりました。
基本的には社会学における「フィールドワーク」の手法をコンピュータ・ソフトウェアやデジタル機器、ウェブサイト等のUIデザインに応用したもので、ユーザーへのインタビューや行動の調査から得られた事実データに基づいて行動パターンを定義し、それを基にターゲットユーザーを人格化していくことで顧客のニーズを特定していきます。
ウェブサイト設計においては、主にその人格(ペルソナ)の定義を基に自社の顧客ニーズを特定し、それに対応したコンテンツの設計とコンテンツを結ぶコンテクストとしての導線を設計、最終的な導線上のゴール(コンバージョン)に導くための全体構造を定義するために用いられます。
ウェブの場合、予算等の関係で実際にはインタビューや行動の調査等が行なえない事が多く、自社が持つ様々なデータと推測によって作られる暫定ペルソナ(アドホックペルソナ)を用いたケースが大半ではないかと思います。
私的にはユーザー課金や広告収入、ユーザー数の増加が収益の重要な要素になるウェブサービスや、イーコマース等のサイトを設計する場合は、実際にインタビューや行動調査等が必要になると思いますが、BtoBのサイト設計に置いては大がかりな調査を行わなくても、営業部隊を通じて既存顧客へのヒヤリングなどを行う事で、一定の程度の精度を保った設計を行う事が出来ると思います。
BtoBサイトの設計時には製品の購買動機や購買に至るまでの期間、顧客の規模によって定義すべきペルソナや設計すべき領域がBtoCとは異なる点に注意する必要があります。
まず、BtoBの場合、購入を検討する人物と製品を探す人物が異なる点と、購買に至るまでの期間が中長期にわたる点がBtoCとの決定的な違いになります。(BtoCの領域においても住宅や車など実用性が高く、高額な製品・サービス領域においても同様の特徴があります)
BtoBの企業サイトに置いては、この2つの特徴を前提条件に入れて設計する必要があります。
特徴① 異なる複数のユーザーニーズに応える必要がある。
まず、なぜ異なる複数のユーザーニーズが発生するのかについて。
BtoCの製品・サービスの場合、購入を検討している人=製品を探している人=サイト訪問者になるケースがほとんどです。あなたがアップルのサイトを訪れて、マックブックプロのページを見ているのは、当たり前ですが、あなたがマックブックプロを欲しいと思っているからです。
しかし、BtoBの場合、購入を検討している人と製品を探している人=サイト訪問者は、異なるケースが想定されます。
まず、顧客のニーズをベースに検証してみましょう。
BtoBの製品・サービスは一般消費財とは異なり個人的なニーズが発生しませんし、そのニーズも発生時は、漠然とした事が大半になります。
ざっくりというと、
・個人のニーズ:欲望・欲求ベース
・法人のニーズ:課題・問題の解決ベース
になります。
企業にとって課題は多くの場合「新規顧客の獲得」もしくは「既存顧客の囲い込み」の2つを発端にして起こります。言い換えれば「売上高の向上」と「利益率の向上」です。
一般的に企業内で「新規顧客の獲得」を担っているのは「営業部門」になります。しかし多くの場合「営業部門」内から「新規顧客の獲得」というニーズは生まれません。「営業部門」から生まれるのは「〇〇会社の案件を取りたい!」といったより具体的で業務に密接したニーズになります。
では企業内で「新規顧客の獲得」というニーズは誰が持っているのか。
これは企業規模により異なりますが、中小・ベンチャー企業の場合は経営者、中堅大手企業の場合には経営層及び営業企画部門等、経営層直轄の部門になります。
では、企業の経営層をメインターゲットとして暫定ペルソナ(アドホックペルソナ)を作成しサイトを設計すればいいのか。というとそう単純なものではありません。
当たり前ですが、社長をはじめとする経営層レベルの人間が具体的な製品・サービスをネット上で探すという行動にでることはありませんし、(かなりコンパクトな企業の場合はありえますが。)そもそもどうやって探せばいいのかもわかっていません。
では、BtoBの企業サイトは誰をターゲットにペルソナを作成しサイトを設計すべきか。
それは決裁までの承認プロセスが重要なキーになります。
次回に続きます。